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体験に基づいたSM(ソフト)の官能小説と雑記
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仕事の帰り、私たちは部署行き着けの居酒屋で酒を飲んでいた。個室があるとはいえ、洒落気のないタバコと焼き鳥の煙が充満するような店だ。ここのおでんが好きなのと可奈が言うので、付き合うことになった。

可奈のことは女性として意識したことはほとんどなかった。女性の間では美人と言われているようだったが、どちらかというと色気に欠け、好みでなかった。

そう思う男は私だけでなく、同僚(男)との間で彼女の話になると、「あいつは美人だけど中身が男なんだよな」だとか、「綺麗だけど色気がな」などと言われていて、私たちの間では「男勝り」という印象の強い女性だったからだ。

そんな可奈が突然、相談に乗ってもらいたいことがあるというので、付き合うことにしたのである。何の話だろうと気にはなったが、もともと興味のある女性ではなかったこともあり、私は居酒屋で酒を飲み始めてしばらくたつと、彼女の話す職場の噂話の方に気をとられ、相談事の件をすっかり忘れてしまっていた。

「ところで…」

「あ、相談だったっけ」

可奈は照れたように笑うと少し間をおいてから切り出した。

「Sさん、エスっぽいって言われない?」

「んっ?」

思わず、私は聞き返した。私の表情を見て可奈は笑った。

「だから、エスエムのエス」

「どうかな。それよりなんだよ、相談って」

「んー。それはあとで言うとして、どうなの? Sさんはエスエムとか経験ある?」

「お前は興味あるの?」

「んー」

「俺、エスっぽい?」

「うん。なんと…なくなんだけど」

「少なくともマゾではないな」

「じゃあ、経験あるの?」

「ないよ。興味すらない」

「そっか。勘が外れちゃったかな…」

可奈は残念そうにため息をついた。

「しっかしお前がSMなんて…意外だな」

「意外? やっぱり意外かな」

「そりゃそうだよ。そんなの斉藤に言ってみ。絶対からかわれるぜ」

斉藤は噂話が好きなことで有名な職場の同僚だ。

「だからSさんを選んだんじゃない!」

「まさか相談ってそれ?」

「ん~」

しらばくれるように、彼女はよそを見て口を曲げた。

「ふーん。で、経験したいの?」

普段男勝りといわれているような彼女の意外な話に興味は惹かれていた。正直、興奮もしていた。しかし同時に、可奈とは関係を持ちたくないとも思っていた。当時、同じ職場に、気になる女性がいたからだ。付き合ってはいなかったが、地道な努力の甲斐あっていい関係になりつつつあった。

職場は本当に狭いもので、万一可奈と噂が立ったら、これまでの苦労が水の泡だ。

「あ、勘違いしないでよ。Sさんが里美さんを狙っているの、知ってるし」

「なんだよそれ」

「いいじゃない。こっちだってさらけ出そうとしているんだから」

「…ったく、それで相談って?」

「うん。相談っていうのは大げさかもしれないのだけど、私ねSさんに興味があるの。と言っても、私には彼氏がいる。彼氏のことが好きで、他の男性と恋愛する気はないの」

「意外…彼氏いたんだ」

「な、何よそれ!」

「いや、気を悪くしないで欲しいんだけど、てっきり男には興味ないのかと思ってたよ。お前、職場での性格が男っぽいし」

「まあ、そうね…そう見えるかも…ね」

可奈は困ったように笑った。

「女の多い部署にいたから。あ、前の職場ね。嫉妬されないようにとか、女受けとか考えてるうちに、男っぽい自分を演じてたのかも」

「へえ…」

「でも…それが心地いいって思っている自分もいる。他の女の子たちから頼られたり、可奈が男だったらよかったのに、なんて言われると、正直嬉しいし…」

「うん。確かにお前女にもてるよな」

へへっと彼女は笑う。本当に嬉しそうだ。しかしすぐさま、表情を曇らせた。

「彼氏も、そうなの」

「彼氏も…って?」

「私に男っぽいところを求めてくるの。何かと頼ってくるし、甘えてくる…あ、誤解しないで。それが嫌だっていうわけじゃないの。そういうの、嬉しいって思う自分もいる。なんていうか母性がくすぐられるっていうか、必要とされてるって思うから…でも…」

私は黙って聞いていた。一呼吸おいて、可奈が続けた。

「彼氏、マゾなのよ」

「えっ」

可奈の口調から冗談でないことは分かっていたけれど、どこか言葉の響きがユーモラスで、私は笑い出しそうになった。しかし彼女は真剣そのものだ。

「付き合い始めの頃は普通だったんだけど、最近要求がエスカレートしてきて、この間も足でアレを踏んでくれだとか言い始めて…私、正直困っちゃって」

「ああ、そういうこと」

「そういうこと…というのも、ちょっと違うかもしれない」

「ん?」

「彼氏がそういう嗜好だから私はどうすればいいの? …とかじゃないの。彼氏の相談をしたいわけでもない」

何となく、うなずいているだけの方がいいような気がして、私は聞き返さなかった。酒を一くち飲んで、可奈は私から視線をそらし、私の手元をじっと見つめた。

「キレイな手…」

「ああ、苦労してない手だって母親に言われてるよ」

「…私の好みの手なの。細くて…長くて…白くて…女性みたいな…前から、きれいな手だなって思ってた…」

可奈は私の手を見つめたまま言った。私は黙って、彼女の言葉を待っていた。

「私ね…」

「…」

「私がMになれる場所がほしいの…」

そう言って可奈は顔をあげると、今度は私の目をじっと見つめてきた。


つづく

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